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叙情性たっぷりのインカ史入門
(2007-02-12)
まず、まるでおとぎ話ででもあるかのような文体にぐいぐい引き込まれる。
無味乾燥な学者の報告、といったものではなく、感情たっぷりに、それでいて史実をきちんと描きながらつづられており、まさに、インカ史を知るための第一歩としてこの上ない一冊だ。
ピサロを単なる残酷な征服者ではなく、分別のあった人物として描いていることは、インカ帝国および先住民にシンパシーを覚える人にとってはあまりうれしいものではない。
だがこれは、逆にインカ帝国をスペインと同等な存在として扱っているがゆえである。
インカ帝国は内紛もあれば制度的な矛盾もある「近代国家」であった。
それがきちんと描かれているからこそ、インカ帝国やその人々のことを単なる「伝説」ではなく「歴史」としてよりリアルに感じることができるのだ。
後半、ちょっと誤植が目立つのは、聞きなれない地名・人名が多いゆえのご愛嬌か。
ただ、奥付の初出表記で昭和と西暦を間違っているというのはちょっと・・・。
これだと、著者は本書を8歳で書いたことに(笑)!
インカ征服の過程
(2006-04-17)
1961年の単行本の文庫化。
ピサロによるインカ帝国征服の様子を克明に描いた歴史書。同時代の文献、現代の考古学的研究などを用いて、征服の過程を再構成している。学術的というよりは、なかば物語風に通史を描いたもので、誰にでも楽しめるように出来ている。
著者の構成力、文章力はなかなかのもので、引き込まれるように読んでしまった。
特に人物の内面を描くのが上手い。本の全体はインカに同情的に描かれているのだが、征服者ピサロに対しても、単に野蛮な殺戮者とすることはない。そのあたり、非常に面白かった。
みずみずしい感性
(2002-03-17)
征服に来たスペインの総督ピサロが、インカの皇帝と対決する場面は、圧巻である。戦史のようであり、冒険物語のようでもある。映画のように鮮やかなイメージを運んで来て、映画などでは表現しきれない描写がなされている。
著者は学者であるが、「人間」のよくわかった研究者である。ピサロの感じ方にも、皇帝の心の模様にも共感する感性をもっている。むろん、史料がすぐれているのかもしれないが、それを構成し再構成する力量を感ずる。
なにより著者の強烈な異文化体験があって、このようなみずみずしい文章が成立したのだろう。
おすすめの一冊。
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