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恐ろしき蛮行の数々。
(2008-12-25)
コロンブスによる新世界の発見は富を求めるスペイン人征服者たちによる暴力的な侵略へとつながった。本書は、キリスト教の司教であるラス・カサスが、現地におけるスペイン人のインディオに対する蛮行の数々を糾弾するためにスペイン国王に提出した報告書である。当時の中南米におけるスペイン人による侵略の残忍さはよく知られたものではあるが、それでも本書の内容には戦慄を禁じ得ない。人はなぜ「他者」に対してここまで残忍になれるのだろうか。ナチスのホロコーストにも比肩しうるような恐ろしい暴力が本書に満ちている。読んでいて気が滅入るばかりだがこれは事実なのである。
ラス・カサスがインディオに対するヒューマニティを見せる一方でアフリカの黒人を代わりに奴隷とすることを提唱していたことは有名だし、また彼はスペイン国王による中南米の統治そのものは否定していなかったことは本書からも読み取れる。その点彼の思想には確かに限界がある。だが犠牲となった者たちは自らの言葉によってその経験を語ることができなかった。それほどまでにスペイン人によるインディアスの文明の破壊は徹底したものとなった。ラス・カサスによるこの報告がなかったならばインディオ達の経験は歴史の片隅にも残らなかったであろう。歴史は権力者が作るのだ。そう考えると様々な思想的限界を孕みつつもやはりラス・カサスの業績は比類ないものなのだろうと感じる。
訳者の解説がまた勉強になる。本書はその後国際政治の中でオランダやイギリスなど、スペインに敵対する国々によって翻訳、引用され対スペイン戦争の大義名分となってきたという。結果スペイン領を継承する形で列強は植民地帝国を築き上げていったのである。本書がどのように解釈され、利用されていったのか。そのプロセスにも人はなぜ「異質な他者」と認識する相手を自分と対等な存在として認識できないのかという問題が孕まれているような気がしてならない。
この本が無ければインディアス達の惨劇は歴史から消えていただろう
(2008-11-04)
作者の時代にこんなヒューマニティーを持つ人物がいたのがめずらしい
人道とか人権と言う概念そのものが希薄だった時代に、この報告書を書こうとしたことがすごいと言える
『アポカリプト』にも出ていたけど、キリスト教布教を盾にした虐殺と破壊の歴史を赤裸々に書いてある。
だからドラマ的な面白さは無いが、当時の雰囲気を感じるには最適
この虐殺の様子が南米大陸だけではなく世界中でも行われたのは言うまでも無い。
欧米人たちの差別意識(インディアスは人間ではない)には恐怖を感じる
十字架を掲げ虐殺と破壊を繰り返した欧米人達をインディアスは「神」ではなく「悪魔」と感じただろう
作者に敬意を表して星5つ
南北問題と近代国家の成り立ち
(2006-10-27)
ラス・カサスの視点を問題とせず、この書が現在に残ったことを評価します。歴史上は知っていましたが、読んで衝撃でした。この問題が現在も進行していることを私たちは認識しなくてはなりません。歴史を書いた白人と歴史を評価されない人々。資源を略奪するヨーロッパ人と自然と共存する人々。国家とは何か、文明とは何か、自衛する力を持たない民族はどうなるかがよく分かります。自称宗教と文明、そして武力を持った者が正義の名の下に増殖するのですね。この分野では現代企画室が価値ある出版をしていました。
ネイティブアメリカンの虐殺、真実をどれだけ知っていますか?
(2006-09-08)
コロンブスがアメリカ大陸を再発見した後に、スペイン人たちによるネイティブアメリカンの大量虐殺を行った事実は有名である。
本書は、その行いをスペイン人の立場から、事実をありのままにまとめたものとして、極めて貴重な歴史的資料である。
著者は、キリスト教宣教師として50年以上もキューバでの布教活動を行ったラスカサス。彼がその目で見た、ネイティブアメリカンに対する虐殺行為を広く世に訴える形の報告書となっている。
1400〜1600年当時の中世ヨーロッパでは、公開処刑や拷問がごく当たり前のように行われていた時代である。現代人からすれば戦慄を覚えるような行為も、ある程度寛容される傾向があった時代であった。
しかしながら本書に書かれた記述は、そういった当時の風潮を鑑みても常軌を逸した狂気的な虐殺といわねばならない。
鉄球に縛り付けた上で、下からとろ火で何日もあぶり続ける、赤ん坊の足を持って岩に頭を叩きつける、誰が一刀で体を二つに切断できるか賭けをする・・・。その結果1500万人以上のネイティブアメリカンが殺された。
こうした行為が、何一つ正当な理由なく行われたというラスカサス自身の言葉は、非常に衝撃的である。
人が異なる文化に出会ったときに受ける一種の違和感とそれに対する不安、漠漠とした感に始まり、次第に抑制の箍が外れて大虐殺にいたるという解釈だけでは説明できない現象がここには記されている。
人の歴史や生死を考えるために読む本である、とは言わない。考えるよりもまず手に取り、心に浮かぶ感情を受け止めるべき本である。
ラス・カサスへの評価は慎重である必要がある
(2004-08-20)
スペイン人の新大陸での鬼畜の所業を訴えた人物として有名な彼であるが、もうちょっと慎重に評価する必要がある。彼は1520年にこんな発言をしたことがあるのだそうである「インディオの身体の作りがひ弱であると示唆し、アフリカの住民なら、鉱山やプランテーション用の肉体的な苦役に、はるかによく耐えられる」と。この言葉が奴隷商人に示唆を与え、黒人奴隷貿易を引き起こすきっかけのひとつになったのである。彼の名誉のために付言するが、後に奴隷貿易の実態を知った彼は反省している。だが彼は何によって新大陸住民とアフリカ人を比較したのか。新大陸住民はアステカ・インカといった驚嘆すべき文明を建設したが、アフリカ人に文明は見出せないことだった。極めて独善的な評価だろう。ちなみにカトリックとして新大陸住民を「人間」と認めたのは教皇パウルス3世で1537年に教書「スブリミス・デウス」を発布し、さら異教徒であっても奴隷としてはならないとしている。
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