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存在価値のない本
(2005-03-07)
旅行記として読んで面白くなく、ガイドブックとしても有用でなく、写真が美しいわけでもない。まったく存在価値のわからない本であった。
2004年1月にNHK・BSで放送された「トレッキング・エッセイ紀行 雨と森と湖の散歩道 イギリス・湖水地方」を本にしたもの。主人公であったエッセイストの谷村氏が、トレッキングの様子を回顧して一冊にまとめている。
イギリスの田舎には、自由に通行することの出来るフットパスというものがある。本書は湖水地方のフットパスを歩いた記録ということになる。フットパスがイギリスで発達している理由は、土地の私有が日本よりもはなはだしいためである。山でも湖でも個人の持ち物であり、そこに行くにはフットパスを利用せざるを得ない。それを知らずにフットパス賛美をするのはどうかと思う。
旅行記としてお粗末な原因は、@イギリスや湖水地方に関して鋭い分析や新しい視点が提示されず、A著者の内面が語られるわけでもなく、B地元の人々との交流が描かれることもないため。ガイドブックとして使えないのは、@地図がない、A明確なコース、所要時間、フットパスの利用法が示されないため。
岩波書店の見識を疑った。
ちなみに、放送された番組も見たが、そちらももうひとつだった。
ワーズワースの世界
(2005-02-20)
イギリス湖水地方にはいつか行ってみたいけれどツアーは嫌だな、と思っている私にとって絶好の参考書となりそうな本です。フットパスの存在自体は別の本で読んだことがあったのですが、実際に何日もかけて歩いた人の本は初めてでした。スタッフの準備が整っているとはいえ、志穂さんの情感こもった自然の描写がすばらしく、雨に濡れて歩く大変さも含めて臨場感を持って伝わってきます。たくさんの湖や緑もいいのですが、ところどころで出会う小さな村々での志穂さんの体験を読むと、是非行きたいと思うはず。もし行けることがあれば、やはり志穂さんとおなじように、ワーズワースの詩集を1冊持って行きたいものです。
バスツアーでなくて歩くことで体験できるすばらしさ
(2004-09-07)
イギリス湖水地方は、最近はワーズワースよりビアトリクス・ポター(というよりピーターラビット)によって関心が高いのではないでしょうか?その代表的なコースをトレッキングした作家谷村志穂さんの紀行。この地方の風景と人とちょっぴり歴史とをおとなう一週間の秋の旅。
この地方は、日本人が観光で頻繁に訪れる人気のコースです。しかし、谷村さんは、バスツアーでなくて歩くことで体験できるこの地方のすばらしさを伝えてくれます。トレッキング専用歩道であるフットパスが密に張り巡らされている様子、振り返ると今歩いてきた素敵な景色がひらけて見える感動、コテージでの人との交わりなどをとおして、谷村さんは、そのことを強く訴えておられて結構良く伝わってきます。大学で動物学を学んだ谷村さんだから、灰色ウサギの他にもロビン(イギリスの国鳥)や赤毛のリスやいろんな風体のヒツジとそれを追うイヌなどがしばしば描かれます。
この本は、NHK(BS)の「トレッキング紀行」の紙上版。だから、取材の裏話や放映されなかったシーンも少しだけ紹介されています。映像とこの本で私もこんな旅がしてみたいと思ったものです。欲をいえば、ということで苦言を呈せば@写真はすべてモノクロですが、それらが小さすぎて老眼の私にはつらい。A地図があまり適切でない。土地の名前か湖水の名前か分からない記名とか、「立ち寄ってみるのもいい」とされた場所でも、添えられた地図にその地点が時に書かれていないとか、モノクロの濃淡が地形の高低とどう関係するのか読みとれない、など。Bコラム風の写真入り見開きページが、後半2個所で、谷村さんの流れるような叙述を途切れさせて割り込んでくる。でもこれらはマイナーです。
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